大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
 いつも優しく、志乃を包み込むようにほほ笑むその瞳は、今はひどく熱を帯びていた。

 花奏は志乃の反対の手も握ると、志乃と向き合うように、正面から見つめる。

 志乃は今にも飛び出しそうにドキドキと早くなる鼓動のまま、花奏の次の言葉を待った。

 花奏はゆっくりと口を開く。


「志乃は俺の妻だ。後にも先にも、俺の本当の妻は、志乃、お前だけなのだ」


 花奏の言葉に、志乃ははっと息を止めた。

 胸がいっぱいで、とても苦しい。

 志乃の瞳は次第に潤んでくる。


 “旦那様の本当の妻になりたい”


 志乃が心の中でずっと願い続けていたこと。

 その言葉が今、花奏の口から紡ぎ出されているのだ。


「あ、あの……私……」

 志乃はこみ上げる涙に、言葉を詰まらせた。

 感情が高ぶって、この気持ちを、花奏になんと伝えたら良いのかわからない。

 すると花奏は志乃が戸惑っていると感じたのか、小さく眉を下げた。

「俺はこれからも、志乃に側にいて欲しいと思う。ただ……志乃が嫌でなければの話だが……」

 目線を下げる花奏に、志乃は瞳を揺らす。
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