大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
そして花奏に優しく抱き寄せられ、そっと触れるように唇が重ねられる度に、志乃はついに花奏と夫婦になれたのだと、心の底から満たされたのだ。
志乃は、花奏の柔らかな唇の感触を思い出し、思わず熱くこもった息をもらす。
――旦那様にもっと触れたい……。
花奏と想いを通わせたあの日以来、志乃の中でその気持ちはどんどん大きく膨らんでいる。
こんなことを思うのは、はしたないだろうか。
一人自分の部屋で夜を越すたび、志乃はそんな事を考えてしまうのだ。
「志乃様。手が止まっておりますぞ」
すると途端に背後から厳しい声が飛んできて、志乃は無意識に触れていた自分の唇から指を離すと、慌てて背筋をピンと伸ばした。
「ひゃっ、は、はい」
志乃は大袈裟に返事をすると、急いで黒々とした漆の重箱を、乾いた布で拭いていく。
世話しなく動いていた五木は、フォッフォッと笑いながら、慣れた手つきで志乃が置いた重箱に、数の子や田作り、かまぼこを詰めていった。
志乃は、花奏の柔らかな唇の感触を思い出し、思わず熱くこもった息をもらす。
――旦那様にもっと触れたい……。
花奏と想いを通わせたあの日以来、志乃の中でその気持ちはどんどん大きく膨らんでいる。
こんなことを思うのは、はしたないだろうか。
一人自分の部屋で夜を越すたび、志乃はそんな事を考えてしまうのだ。
「志乃様。手が止まっておりますぞ」
すると途端に背後から厳しい声が飛んできて、志乃は無意識に触れていた自分の唇から指を離すと、慌てて背筋をピンと伸ばした。
「ひゃっ、は、はい」
志乃は大袈裟に返事をすると、急いで黒々とした漆の重箱を、乾いた布で拭いていく。
世話しなく動いていた五木は、フォッフォッと笑いながら、慣れた手つきで志乃が置いた重箱に、数の子や田作り、かまぼこを詰めていった。