大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「正月を祝うなど、何年ぶりでしょうか……」
しばらくして、五木が手を動かしながら、しみじみと声を出す。
「そうなのですか?」
志乃は小さく首を傾げた。
「えぇ、もう何年も正月はしておりません。再びこの重箱を開く日が来るなど、思ってもみませんでしたぞ……」
泣いているのか、五木は目を何度もしばたたかせると、そっと鼻をすする。
志乃は、今は彩り豊かな料理が盛りつけられた重箱に目を向けた。
香織が亡くなって以降も、この家では毎年、何人もの人が亡くなってきた。
当然、正月は喪に服し、花奏と五木は二人で静かに過ごしていたのだろう。
「今年は私も一緒に新年を迎えられて、とても嬉しいです」
志乃が潤んだ瞳を上げ、にっこりとほほ笑むと、五木は何度もうなずきながら手ぬぐいで涙を拭った。
志乃はそんな五木の顔を見ながら、谷崎の屋敷から戻った日のことを思い出す。
あの晩、車から降りた志乃と花奏が庭先に姿を見せると、五木は転びそうになりながら、土間から飛び出してきた。
しばらくして、五木が手を動かしながら、しみじみと声を出す。
「そうなのですか?」
志乃は小さく首を傾げた。
「えぇ、もう何年も正月はしておりません。再びこの重箱を開く日が来るなど、思ってもみませんでしたぞ……」
泣いているのか、五木は目を何度もしばたたかせると、そっと鼻をすする。
志乃は、今は彩り豊かな料理が盛りつけられた重箱に目を向けた。
香織が亡くなって以降も、この家では毎年、何人もの人が亡くなってきた。
当然、正月は喪に服し、花奏と五木は二人で静かに過ごしていたのだろう。
「今年は私も一緒に新年を迎えられて、とても嬉しいです」
志乃が潤んだ瞳を上げ、にっこりとほほ笑むと、五木は何度もうなずきながら手ぬぐいで涙を拭った。
志乃はそんな五木の顔を見ながら、谷崎の屋敷から戻った日のことを思い出す。
あの晩、車から降りた志乃と花奏が庭先に姿を見せると、五木は転びそうになりながら、土間から飛び出してきた。