大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~

不穏な知らせ

「旦那様、今日のご予定は?」

 新年の挨拶もすみ、一通り食事が進んだところで、五木が声を出す。

 花奏は少し考える様子を見せていたが、ふと脇に座る志乃に顔を向けた。


「今日は近くの神社に詣でた後、志乃の実家に顔を出そうと思うのだが、どうだろうか?」

「え……私の、実家にですか?」

 志乃は驚いて目を丸くする。

「あぁ、俺も一度は挨拶せねばと思ったのだ。志乃も最近は顔を見せに帰っていないだろう?」

「そうですが……。でも、旦那様に出向いていただくなど、本当に良いのですか?」

「当たり前だ。何を遠慮する必要がある」

 花奏はそう言うと優しく目を細めた。

 志乃はパッと笑顔を咲かせると、花奏に大きくうなずき返した。


 片づけを終えた志乃が部屋で支度を整えていると、何やら騒々しい声が聞こえてくる。

 志乃は首を傾げると、そっと耳をすませた。

 正月の穏やかな陽気に似合わないその声は、どうも屋敷の入り口の戸を大きく叩きながら叫んでいるようだ。
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