大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「何事かしら……」

 不安になった志乃が部屋の障子を開けると、ちょうど花奏も様子をみるために部屋を出たところだった。

「旦那様、何事でしょう?」

 志乃が不安になって声をだすと、花奏もいぶかしげな顔を見せている。

 その時、廊下をドタドタという足音が響き、五木が血相を変えて花奏の元へ駆けてくるのが見えた。


「だ、旦那様! 大変です! 今、表に谷崎様がお越しなのですが、エドワード様が怪我をされたと……」

 五木の声を聞くなり、花奏は息をのんだように目を開き、すぐに玄関に向かって走り出す。

「エドワード様が……!?」

 志乃は次第に震え出す手を握り締め、花奏の後を追うように駆けだしていた。


「それは、まことの話ですか!?」

 志乃が廊下を進んでいた時、花奏の大きな声が響いてくる。

 今までに、花奏のこんな切羽詰まった声を聞いたことがあるだろうか。

 不安になった志乃は、そろそろと廊下を進むと玄関へとそっと顔を覗かせた。

 見ると、玄関すぐの土間では、谷崎が膝に手をついて、はぁはぁと肩で息をしている。

 谷崎は軍からそのままこちらに来たのか、黒の軍服姿だった。
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