大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「私が報告を受けた内容によると、聞けば言い争いのきっかけは、ほんの些細な誤解とか。切りつけた将校は捕えておりますが、できることなら、このまま穏便にすませたいのです」

 谷崎の低い声に花奏は深くうなずく。

「あの、どういうことでしょうか?」

 つい声を上げた志乃に、花奏が静かに振り返った。


「エドワードは、自国の軍の中心にも近い人物。このことが公になり、下手に周りが騒ぎ立てでもしたら……あるいは……大きな争いにもつながりかねん」

「大きな……争い……?」

 志乃は一気に血の気が引いたように顔を青ざめさせる。

 花奏は深くため息をついた。


「些細な個人の行き違いが、軍を巻き込むような争いに、発展することもあるのだ」

「そんな……」

 志乃は息をのみ、その場に重い空気が漂う。

 軍を巻き込むような争いなど、聞いただけで恐ろしくて震えてくる。

 志乃は思わず両手で自分の身体を抱えた。

 すると志乃の様子に気がついた花奏が、隣に膝をついて優しく肩を抱いてくれる。


「志乃、案ずることはない。とにかく、エドワードに会うのが先だろう」

 志乃を落ち着かせるように、口元を引き上げる花奏に、志乃はこくんとうなずいた。
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