大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「少し考えたいことがある。部屋まで茶を持って来てくれんか?」

 花奏は眉を下げると志乃に顔を向ける。

「はい……。かしこまりました」

 そううなずく志乃の肩にそっと手を乗せると、花奏はそのまま玄関へと入っていった。

 志乃は不安が募る自分の両手をぎゅっと握り締めると、茶を入れるために炊事場へと向かった。


「失礼いたします……」

 志乃は盆を手に、花奏の部屋の前で声をかける。

 中から返事が聞こえ、そっと障子を開けた。

 目線を上げると、花奏は何かを考えこむように、机に肘をついて額に手を当てている。

 志乃は湯飲みを机に置くと、そっと花奏の側に寄った。


「エドワードは三日後に出る船で、帰国すると言っておる」

「三日後……!?」

 志乃は小さく息をのむ。

 そんなに早く出発するなど、余程この街にいたくないという気持ちの表れか。


「やはり今回の件は、エドワードの心に深く傷を残したようだ。前々から感じていた小さなズレが、決定的になったと言っていた」

 花奏は顔を上げると小さく息をついた。
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