大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
志乃は着々と用意される、前の舞台に目をやる。
今日は元々邦楽器の演奏を予定していたため、高さのある舞台が用意されていた。
そこへ今は、志乃の箏を置いてもらっている。
志乃が持ってきたのは、もちろん香織の箏だ。
正直志乃は香織とは違い、今までこのように大きな会場で、多くの人に見られながら箏を演奏した経験など一度もない。
だからこそ、香織の箏を使わせてもらうことで、少しでも勇気を分けてもらえる気がしたのだ。
志乃はふと、昨夜の花奏との会話を思い出す。
志乃が演奏会で箏を弾きたいと言った時、花奏ははじめ酷く驚いたような顔をしていた。
「志乃の箏が素晴らしいことは、俺も十分承知しているはずだ。だが、箏を演奏して、どうしようというのだ?」
困惑したように声を出す花奏に、志乃はまっすぐに顔を上げる。
「私に一つ、考えがあるのです」
「考え?」
「はい。きっとエドワード様になら、伝わると思います」
「どういうことだ?」
訳がわからない様子で首を振る花奏の腕を、志乃は両手でぎゅっと握り締めた。
今日は元々邦楽器の演奏を予定していたため、高さのある舞台が用意されていた。
そこへ今は、志乃の箏を置いてもらっている。
志乃が持ってきたのは、もちろん香織の箏だ。
正直志乃は香織とは違い、今までこのように大きな会場で、多くの人に見られながら箏を演奏した経験など一度もない。
だからこそ、香織の箏を使わせてもらうことで、少しでも勇気を分けてもらえる気がしたのだ。
志乃はふと、昨夜の花奏との会話を思い出す。
志乃が演奏会で箏を弾きたいと言った時、花奏ははじめ酷く驚いたような顔をしていた。
「志乃の箏が素晴らしいことは、俺も十分承知しているはずだ。だが、箏を演奏して、どうしようというのだ?」
困惑したように声を出す花奏に、志乃はまっすぐに顔を上げる。
「私に一つ、考えがあるのです」
「考え?」
「はい。きっとエドワード様になら、伝わると思います」
「どういうことだ?」
訳がわからない様子で首を振る花奏の腕を、志乃は両手でぎゅっと握り締めた。