大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
故郷(ふるさと)を大切に思われているエドワード様だからこそ、この街もあなたの故郷なのだと伝えたい。いつでもあなたの帰りを待っていると、伝えたいのです」

「それを箏の演奏に込めるというのか?」

「はい、そうです。エドワード様になら、きっと届くはずです」

 志乃の迷いのない瞳に、しばらく花奏は驚いたように目を丸くしていたが、急に声を上げて笑い出した。


「やはり、志乃は面白い娘だ。何をしでかすか、俺には想像もつかぬ……」

 くすくすと笑う花奏の言葉の意味がわからず、志乃は小さく首を傾げる。

「旦那様?」

 志乃が聞き返そうとした時、花奏は静かに立ち上がると、志乃の腕を優しく引いた。

「きゃっ」

 軽く悲鳴を上げた志乃の身体は、そのまま花奏の胸にきつく抱きしめられる。


「だ、旦那様……どうされたのですか?」

 戸惑って声を上げる志乃に、花奏はくすりと肩を揺らすと、愛おしそうに志乃の頬に優しく指先で触れた。

「でもそれが、俺が愛する志乃の魅力なのだ」

 花奏のささやくような声に、志乃は途端に目を丸くする。

「旦那様が……愛する……私……」

 志乃は幸せを噛みしめるように、花奏の愛の言葉を繰り返した。
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