大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
なんともいかがわしい話だ。
志乃は不信感に満ちた瞳を五木に向ける。
「では、お相手のことをお聞かせください。お相手はどなたなのですか!?」
志乃はちゃぶ台に握った拳をのせると、少々強気で身を乗り出した。
志乃の声に五木はぴたりと手を止めると、静かに湯飲みをちゃぶ台に戻す。
「ほお。それをお聞きになった場合、志乃様もこの縁談にご納得いただけたものと承知いたしますが、よろしいですかな?」
「……え?」
五木の今までとは違う、射るような眼差しに、志乃は一瞬で身がすくんでしまう。
名前を聞いたが最後、この話から逃れることはできないとでもいうのか?
すると酷く動揺する志乃の耳に、襖の奥から母の声が聞こえてきた。
「志乃……よくお聞きなさい」
「お母さん……?」
「母はこの話を聞いた時、救われた思いがしましたよ。これで私の身に何かあっても、安心して逝けると……。華や藤のためにも、お嫁に行ってはくれませぬか?」
志乃は不信感に満ちた瞳を五木に向ける。
「では、お相手のことをお聞かせください。お相手はどなたなのですか!?」
志乃はちゃぶ台に握った拳をのせると、少々強気で身を乗り出した。
志乃の声に五木はぴたりと手を止めると、静かに湯飲みをちゃぶ台に戻す。
「ほお。それをお聞きになった場合、志乃様もこの縁談にご納得いただけたものと承知いたしますが、よろしいですかな?」
「……え?」
五木の今までとは違う、射るような眼差しに、志乃は一瞬で身がすくんでしまう。
名前を聞いたが最後、この話から逃れることはできないとでもいうのか?
すると酷く動揺する志乃の耳に、襖の奥から母の声が聞こえてきた。
「志乃……よくお聞きなさい」
「お母さん……?」
「母はこの話を聞いた時、救われた思いがしましたよ。これで私の身に何かあっても、安心して逝けると……。華や藤のためにも、お嫁に行ってはくれませぬか?」