大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
 胸がいっぱいになった志乃は、皆が温かく見守る中、再び深々とお辞儀をする。

 そして涙をいっぱいに溜めた顔でほほ笑むと、皆に見守られながら舞台を下りた。


 しばらくして次の奏者が舞台上で準備を始め、会場内は幾分か落ち着きを取り戻す。

 志乃は舞台袖を離れると、花奏の元へと足を進めた。

 花奏はエドワードや田所、谷崎らと共に会場の奥で志乃が戻ってくるのを待っている。


「旦那様」

 次第に駆け足になった志乃は、顔を上げて思わず花奏に向かって呼びかけた。

「志乃」

 すると花奏は両手を広げながら、優しくそれに応えてくれる。

 志乃は「旦那様……」と涙声で再び呼びかけると、そのまま花奏の胸に飛び込んだ。


「志乃、よくぞ伝えてくれた……」

 人目もはばからず、飛び込んできた志乃を力いっぱい抱きしめた花奏は、何度も志乃の頭を撫でてくれる。

「旦那様、くすぐったいです」

 くすりと志乃が笑った時、花奏は志乃を天井に向けて抱き上げると、そのまま再びきつく抱きしめた。
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