大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「きゃ……だ、旦那様……!?」

慌てて花奏の首元に抱きついた志乃は、ジタバタとするが、花奏は一向に離してくれる様子はない。

 花奏が人前でこんなことをするなんて。

 志乃は嬉しい反面、次第に恥ずかしさが募り、もう顔が真っ赤だ。


「きゃあ♡」

 すぐ側で唯子が黄色い声を上げ、慌てて谷崎が「こ、こら」と唯子の目元を覆う。

 その隣では、エドワードが口笛を吹きながら囃し立てていた。

「花奏も、なかなかやるなぁ」

 横からひょいと顔を見せた、田所の声も聞こえている。


 皆が二人を祝福する雰囲気の中、花奏は志乃をそっと下ろすと、優しく志乃の両手を握った。

 志乃は、ふらふらとのぼせたように真っ赤になった顔を上げる。

 花奏はじっと志乃の瞳の奥を見つめていた。


「志乃……俺は志乃を妻として迎えたことを、心の底から誇りに思う」

 花奏の言葉に、志乃ははっと息を止める。

 その瞬間、志乃の脳裏に嫁いでからの日々が、一気に思い出された。
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