大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~

つながる心

 感動的な祝賀会での演奏を終えた夜、志乃はどきどきと高鳴る胸を抑えるように、自分の部屋でゆっくりと髪をとかしていた。

 もう夜も更けて辺りは静まり返り、昼間のあの華々しい時間が嘘だったかのように感じる程だ。


 志乃はふと、祝賀会でのエドワードの言葉を思い出す。

 宴もたけなわになった頃、エドワードは志乃の隣にやってきた。

「シノ、アリガトウ」

 穏やかな表情でほほ笑むエドワードに、志乃は心からホッとする。

 一時はこの街や人に絶望し、心を閉ざしていたエドワード。

 でも今、そのほほ笑みは明るく、この街を故郷のように思ってくれていた時のエドワードと同じものだった。


「ボクハ、モウ、ダイジョウブ。マタ、ミンナト、ナカマニナレル」

 エドワードはそう言うと、志乃の手をぎゅっと両手で握る。

 その分厚い手に、志乃は大きくうなずくと、力いっぱい握り返した。

 しばらくしてエドワードは顔を上げると、少し離れたところで田所や谷崎たちと会話する花奏に目をやった。
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