大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「カナデ、ツライコト、イッパイアッタ」

 エドワードの言葉に志乃は「え?」と驚いて顔を上げる。

 そういえば花奏が、エドワードは古い友人だと言っていた。

 もしかしたら香織のことや、花奏が“死神”と呼ばれていたことも知っているのかも知れない。

 驚いたように目を丸くした志乃に、エドワードは口元を引き上げた。


「デモイマハ、シアワセソウ。シノガ、イレバダイジョウブ」

「エドワード様……」

 瞳を潤ませる志乃に、エドワードは力強くうなずくと、小さく志乃を手招きする。

 エドワードは、首を傾げる志乃の耳元にそっと手を当てた。


「ヤッパリ、シノハ、カナデノタイセツナヒト」

 小さくささやくように言ったエドワードの言葉に、志乃は「あ……」と思わず声を出す。

 以前、社交界でもエドワードは、同じことを言っていたことを思い出したのだ。

 確かあの時も、志乃はエドワードがどういう意味で“タイセツナヒト”と言ったのか気になっていた。

 というのも、あの時はまだ志乃と花奏は心を通わせておらず、花奏に妻ではなく“身内の者”と紹介されて、ショックを受けた時だったからだ。
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