大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「……あの、エドワード様。その“タイセツナヒト”というのは、どういう意味ですか?」

 志乃は伺うようにエドワードを見上げる。

 するとエドワードは片目を閉じてウインクしながら、そっと人差し指を口元に当てた。


「シノハ、カナデノ、タイセツナワイフ」

「え……?」

 志乃はエドワードの言葉がうまく聞き取れず、大きく首を傾げる。

「大切な……ワ……イフ?」

 そう繰り返しながら、志乃は何度も大きく瞬きをした。

 エドワードの言葉の意味がわからない。

 今更ながら、女学校の外国語の授業を、真面目に受けておけば良かったと後悔する。


 ――どういう意味かしら? エドワード様は、なんとおっしゃったの?


 志乃はしきりに首を傾げるが、エドワードはにこにことほほ笑んだままだ。

 すると会話をする二人に気がついたのか、こちらを見た花奏が、ゆっくりと隣にやって来た。


「志乃、どうしたのだ? 随分と難しそうな顔をしているが?」

 花奏は自分の眉間を、ちょんちょんと指でさすと、不思議そうに志乃の顔を覗き込む。

 志乃は「あの……」と恥ずかしそうにうつむいた。
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