大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「実は……エドワード様の、お言葉の意味がわからなくて……」

 志乃がもじもじとしていると、エドワードが花奏の肩を小さく叩いた。

「シノハ、カナデノ、タイセツナワイフトイッタ」

 エドワードが花奏に耳打ちしたその途端、花奏はギョッとしたような顔をする。

 そしてみるみる赤面していくのだ。


「旦那様?」

 不思議に思った志乃が声を出すが、花奏は慌てた素振りを見せるだけで、何も言ってくれない。

 志乃はさらに訳がわからず頭を振るが、エドワードはというと大声をあげて楽しそうに笑いだしていた。

「それは、言わない約束だったであろう」

 花奏はそんなエドワードを軽く睨みつけると、小さく肘で小突いている。

 それでも、エドワードは一向に気にせず、楽しそうに手まで叩き出す始末だ。

 すると、そんな二人の姿を見て、次第に志乃の心も弾み出した。


 ――そうよ。きっとあの言葉は、良い意味なのだわ。


 志乃はそう自分にうなずくと、珍しく耳まで赤く染めた花奏の顔を見上げる。

 それからしばらくは、再び皆で楽しい時を過ごし、エドワードは「また必ずこの街に帰る」という言葉を残し、志乃たちと別れたのだ。
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