大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「お姉たん、このクッキー美味しいね」
藤がクッキーの粉を口の周りいっぱいにつけながら、満面の笑みをこぼす。
志乃は藤の口元を布巾で拭った後、自分の前に取り分けられたクッキーを藤と華の皿にのせた。
五木が消えるようにいなくなった後、どうも志乃は放心状態で板張りの床にへたり込んでいたようだった。
学校から帰ってきた華と藤に、肩を揺すられるまで気がつかなかったのだ。
「お姉ちゃんは食べないの?」
華も久しぶりに食べるクッキーに、頬をほころばせている。
「お姉ちゃんはいいから、二人でたんとおあがり」
志乃はそう言うと、きゃっきゃと声を出しながら、ほほ笑み合う二人に笑顔を見せた。
このクッキーは、五木が手土産にと持ってきたものだ。
クッキーはブリキの馬車の形をした缶に入っており、珍しいその缶を見た瞬間、妹たちは歓喜の声を上げていた。
その様子を見て、ここ最近二人が食べたいお菓子も欲しいと言わなくなっていたのは、我慢してのことだと初めてわかった。
そして二人は、この珍しい缶に入ったお菓子を持って来てくれた老人が、志乃に何を話したかは一切知らない。
藤がクッキーの粉を口の周りいっぱいにつけながら、満面の笑みをこぼす。
志乃は藤の口元を布巾で拭った後、自分の前に取り分けられたクッキーを藤と華の皿にのせた。
五木が消えるようにいなくなった後、どうも志乃は放心状態で板張りの床にへたり込んでいたようだった。
学校から帰ってきた華と藤に、肩を揺すられるまで気がつかなかったのだ。
「お姉ちゃんは食べないの?」
華も久しぶりに食べるクッキーに、頬をほころばせている。
「お姉ちゃんはいいから、二人でたんとおあがり」
志乃はそう言うと、きゃっきゃと声を出しながら、ほほ笑み合う二人に笑顔を見せた。
このクッキーは、五木が手土産にと持ってきたものだ。
クッキーはブリキの馬車の形をした缶に入っており、珍しいその缶を見た瞬間、妹たちは歓喜の声を上げていた。
その様子を見て、ここ最近二人が食べたいお菓子も欲しいと言わなくなっていたのは、我慢してのことだと初めてわかった。
そして二人は、この珍しい缶に入ったお菓子を持って来てくれた老人が、志乃に何を話したかは一切知らない。