大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
 志乃は以前と変わらない家の装いに、懐かしさを噛みしめながら部屋に上がる。

 あれから母は体調を崩すこともなく、親子三人で穏やかに暮らしているようだ。


「お姉たん、こっちこっち」

 藤にせかされるように、志乃は花奏とともに居間に腰を下ろす。

 花奏に興味津々な妹たちは、それからしばらくは、興奮したようにはしゃいでいた。

 藤がお気に入りのビー玉やおはじきを持ってきたり、華が恥ずかしそうに学校で習った読み書きを披露したり。

 花奏もまるで今日初めて会ったのが嘘のように、志乃の家族と打ち解けて、楽しい時間を過ごした。


「志乃、あなたの幸せそうな顔を見られて、母はこんなに嬉しい日はありませんよ」

 帰り際、母が志乃にそっと声をかける。

「家族のために、あなたを嫁がせると決めた後も、本当はとても悩んでいたのです」

「お母さん……」

「でも今日、あなたと斎宮司様の仲睦まじい姿を見て、心から救われました。志乃、とにかく身体を大切に、旦那様に尽くすのですよ」

 涙をためながら志乃の手を優しくさする母に、志乃は瞳を潤ませると何度もうなずいたのだ。
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