大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
二人が手を繋いだまま墓の前を離れると、港の方から船の大きな汽笛が聞こえてくる。
音のする方へ足を向けると、一面に海が見渡せる場所に出た。
ゆっくりと傾きだした日は、夕凪の海を次第に橙色に染めている。
すると花奏が「そうであった……」と何かを思い出すようにつぶやき、懐から細長い小箱を取り出した。
「これを志乃に……」
そっと小箱の蓋を開いた花奏の手元を覗き込んだ志乃は、はっと目を丸くする。
そこには深い金色に輝く、かんざしが入っていた。
「だ、旦那様……これは……?」
志乃が大きく見開いた瞳を向けると、花奏は嬉しそうにほほ笑んだ。
「先程、志乃を待っている時に求めたのだ。今まで色々あり、ろくに贈り物もしていなかったと気がついてな」
照れたように頭に手をやる花奏に、志乃は身を乗り出す。
「そんな! 私は旦那様から、十分すぎるほど色々なものを頂戴していますのに……」
眉を下げる志乃に首を振ると、花奏はかんざしを箱から取り出し、志乃の手にそっとのせる。
志乃は瞳を潤ませながら、大切そうに両手で持ったかんざしを目の前に掲げた。
音のする方へ足を向けると、一面に海が見渡せる場所に出た。
ゆっくりと傾きだした日は、夕凪の海を次第に橙色に染めている。
すると花奏が「そうであった……」と何かを思い出すようにつぶやき、懐から細長い小箱を取り出した。
「これを志乃に……」
そっと小箱の蓋を開いた花奏の手元を覗き込んだ志乃は、はっと目を丸くする。
そこには深い金色に輝く、かんざしが入っていた。
「だ、旦那様……これは……?」
志乃が大きく見開いた瞳を向けると、花奏は嬉しそうにほほ笑んだ。
「先程、志乃を待っている時に求めたのだ。今まで色々あり、ろくに贈り物もしていなかったと気がついてな」
照れたように頭に手をやる花奏に、志乃は身を乗り出す。
「そんな! 私は旦那様から、十分すぎるほど色々なものを頂戴していますのに……」
眉を下げる志乃に首を振ると、花奏はかんざしを箱から取り出し、志乃の手にそっとのせる。
志乃は瞳を潤ませながら、大切そうに両手で持ったかんざしを目の前に掲げた。