大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
平打ちのかんざしは、表と裏の両面に菊の細工がいくつも施されたもので、真ん中に三つ大きな菊が配置され、それを取り囲むように金色と銀色の小さな菊が丸く表現されたものだ。
とても繊細で細かい装飾は、見ているだけでため息が漏れるほど。
「本当に、良いのでしょうか……?」
志乃がうっとりとした顔を上げると、花奏はにっこりとほほ笑む。
「当たり前だ。俺は、志乃のその顔が見たかったのだからな」
「え? 私の顔ですか?」
花奏の声に、志乃は慌てて自分の頬に手をやった。
すると花奏が、そっと志乃の手に重ねるように触れる。
「志乃は本当に幸せそうな顔をする。見る度にころころと変わって、それが面白いのだ」
「まぁ、旦那様ったら」
わざと志乃がぷっと頬を膨らませると、声を上げて笑った花奏が、そっと志乃の手からかんざしを持ち上げた。
「どれ、俺がつけてやろう」
「……はい」
志乃は恥じらうように、頬を染めてうなずくと、そっと横を向く。
花奏の節ばった長い指が、志乃の後ろ髪に触れる感覚が伝わった。
――あぁ、鼓動がどきどきとしてしまうわ……。
今まで、こんなにも自分の髪に意識を集中したことなどあっただろうか。
とても繊細で細かい装飾は、見ているだけでため息が漏れるほど。
「本当に、良いのでしょうか……?」
志乃がうっとりとした顔を上げると、花奏はにっこりとほほ笑む。
「当たり前だ。俺は、志乃のその顔が見たかったのだからな」
「え? 私の顔ですか?」
花奏の声に、志乃は慌てて自分の頬に手をやった。
すると花奏が、そっと志乃の手に重ねるように触れる。
「志乃は本当に幸せそうな顔をする。見る度にころころと変わって、それが面白いのだ」
「まぁ、旦那様ったら」
わざと志乃がぷっと頬を膨らませると、声を上げて笑った花奏が、そっと志乃の手からかんざしを持ち上げた。
「どれ、俺がつけてやろう」
「……はい」
志乃は恥じらうように、頬を染めてうなずくと、そっと横を向く。
花奏の節ばった長い指が、志乃の後ろ髪に触れる感覚が伝わった。
――あぁ、鼓動がどきどきとしてしまうわ……。
今まで、こんなにも自分の髪に意識を集中したことなどあっただろうか。