大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~

終章 二人の夢

 あれから季節は過ぎ、志乃が花奏の元に嫁いでから、二度目の夏がやって来た。

 志乃は花奏に手を引かれて車を降りると、久しぶりに訪れた立派な洋館に足を踏み入れる。

 玄関ホールのステンドグラスは、真夏の日差しを受けてキラキラと光り、床一面に(いろど)りあざやかな影を作っていた。


「やぁ、これはこれは斎宮司君。いつ見ても仲睦まじいですなぁ」

 すると背後から、豪快な声とともに谷崎の父が現れる。

 志乃は汗を拭っていたハンケチを着物の胸元に戻すと、花奏に支えられながらゆっくりと振り返った。


「谷崎様。本日は何から何までご準備いただき、誠にありがとうございます」

 花奏が深々と頭を下げ、志乃も隣で同じように頭を下げる。

「いやいや、お気になさらず。奥様の側にいてやってください。今は大事な時ですからなぁ」

 大きな笑い声に、志乃は恥じらうように花奏と顔を見合わせた。
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