大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「今日は唯子ちゃんにとっても、晴れの舞台ですからね」

「えぇ。それにしても……」

 谷崎は一旦口をつぐむと、優しく志乃を見つめた。

「え?」

 不思議そうに首を傾げる志乃に、谷崎は口元を引き上げる。


「以前バルコニーで話をした時、志乃さんは自分の夢について、深く考えたことがないと、おっしゃっていましたが……」

「えぇ……」

「今の志乃さんは、夢を追いかける少女のように、瞳をきらきらと輝かせていらっしゃる」

「え……? 私が、ですか?」

 志乃は谷崎の言葉に驚いて、思わず自分の頬に手を当てた。

「はい。その顔を見て、僕も負けてはいられないと、身が引き締まる思いがしましたよ」

 谷崎はそう言うと、ぐっと拳を握って見せる。

 その姿はとても立派で、谷崎が以前よりも一回りも二回りも成長したことが伺えた。


「あの日、谷崎様の夢のお話を伺えたこと、本当に感謝しております」

 志乃がにっこりとして声を出すと、谷崎は途端に以前のような、幼さの残るはにかんだ笑顔を見せた。
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