大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
いつでも美味しいものを食べることができ、安心した日常を送ることができる。
でも……。
志乃は顔を上げると、海をオレンジ色に染める夕日を見つめた。
「うまい話なんて、あるはずがなかったのよ」
志乃はぽつりと声を出す。
志乃を嫁にと言ってきた相手は、死神だった。
母や妹への援助の資金は、いわば死神に命を差し出すことへの見返りか。
しばらくぼんやりと夕日を眺めていた志乃は、ふうと大きく息を吐ききる。
そして固く口を結ぶと立ち上がった。
悩んだところで自分が選ぶ道は一つしかない。
――たとえ相手が死神だったとしても……。
そう思った途端、急におかしな気持ちになってくる。
志乃はくすくすと肩を揺らすと、拳をぎゅっと握り締めた。
死神の元だろうが何だろうが、行ってやろうじゃないか。
そちらがその気なら、こちらはとことん死神を利用させてもらうまで。
それで母に心置きなく療養させることができ、妹たちに安心した暮らしをさせてやれるのなら。
そして五日後、志乃は死神の元へ嫁ぐことを五木に申し出たのだ。
でも……。
志乃は顔を上げると、海をオレンジ色に染める夕日を見つめた。
「うまい話なんて、あるはずがなかったのよ」
志乃はぽつりと声を出す。
志乃を嫁にと言ってきた相手は、死神だった。
母や妹への援助の資金は、いわば死神に命を差し出すことへの見返りか。
しばらくぼんやりと夕日を眺めていた志乃は、ふうと大きく息を吐ききる。
そして固く口を結ぶと立ち上がった。
悩んだところで自分が選ぶ道は一つしかない。
――たとえ相手が死神だったとしても……。
そう思った途端、急におかしな気持ちになってくる。
志乃はくすくすと肩を揺らすと、拳をぎゅっと握り締めた。
死神の元だろうが何だろうが、行ってやろうじゃないか。
そちらがその気なら、こちらはとことん死神を利用させてもらうまで。
それで母に心置きなく療養させることができ、妹たちに安心した暮らしをさせてやれるのなら。
そして五日後、志乃は死神の元へ嫁ぐことを五木に申し出たのだ。