大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「あの、旦那様は……いつも何時くらいにお戻りになるのですか?」
志乃はどぎまぎとしながら声を出す。
まだ顔も、名前も知らない旦那様。
初対面はきっと心臓が飛び出そうになるだろう。
すると頬を赤める志乃と正反対に、五木は「はて?」と眉間に皺を寄せながら、何度も首を傾げた。
「そうですなぁ。前回帰って来られたのは、ひと月ほど前でしたでしょうか?」
「ひ、ひと月!? 旦那様は、他にも家をお持ちなのですか!?」
志乃は驚いて素っ頓狂な声を上げる。
「家というか、事務所に泊まられることも度々ございます。出張も多ございますので、志乃様がお顔を会わせるのも、いつになることやら」
五木は楽しそうにフォッフォッと笑うと、奥の部屋へと消えて行った。
「旦那様は、何をされている方なのかしら……」
小さく首を傾げた志乃は、慌てて顔をぷるぷると振る。
死神への余計な詮索は不要だ。
むしろ会わない方が好都合ではないか。
こちらは妻として与えられた家の事をこなし、母と妹たちに必要なお金をわたせればいいだけのこと。
志乃は、そう自分自身に言い聞かせると、ぐっと強くうなずいた。
志乃はどぎまぎとしながら声を出す。
まだ顔も、名前も知らない旦那様。
初対面はきっと心臓が飛び出そうになるだろう。
すると頬を赤める志乃と正反対に、五木は「はて?」と眉間に皺を寄せながら、何度も首を傾げた。
「そうですなぁ。前回帰って来られたのは、ひと月ほど前でしたでしょうか?」
「ひ、ひと月!? 旦那様は、他にも家をお持ちなのですか!?」
志乃は驚いて素っ頓狂な声を上げる。
「家というか、事務所に泊まられることも度々ございます。出張も多ございますので、志乃様がお顔を会わせるのも、いつになることやら」
五木は楽しそうにフォッフォッと笑うと、奥の部屋へと消えて行った。
「旦那様は、何をされている方なのかしら……」
小さく首を傾げた志乃は、慌てて顔をぷるぷると振る。
死神への余計な詮索は不要だ。
むしろ会わない方が好都合ではないか。
こちらは妻として与えられた家の事をこなし、母と妹たちに必要なお金をわたせればいいだけのこと。
志乃は、そう自分自身に言い聞かせると、ぐっと強くうなずいた。