大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「でも今の所、私の身は大丈夫そうよね。第一、旦那様のお顔すら、知らないんだもの」
志乃はロウソクに灯をともし、線香を供えると、静かに手を合わせた。
あんなに固く決意して死神の元に嫁いできたというのに、今の志乃の生活はとても穏やかなものだった。
決められた仕事を終えてしまえば自由に過ごすことができるし、いつ実家に帰っても文句は言われない。
その上、母の療養にかかる費用や、妹たちの生活費は、余るほど援助してもらえるのだ。
田所先生も相変わらず様子を見に来てくれているようで、母の体調もかなり落ち着き、最近では起き上がる日も多くなっている。
「死神の旦那様には、申し訳ないくらいね」
志乃はくすりと肩を揺らすと、ロウソクの火を消して、炊事場へと向かった。
「志乃様、今日はご実家にお戻りになりますでしょう?」
炊事場では五木が大きな釜で白米を焚いている。
「そのつもりですが、何かありますか?」
五木はモクモクと湯気のあがる釜に手を入れると、「よいしょ」と声を出しながら、しゃもじでご飯をかき混ぜだした。
志乃はロウソクに灯をともし、線香を供えると、静かに手を合わせた。
あんなに固く決意して死神の元に嫁いできたというのに、今の志乃の生活はとても穏やかなものだった。
決められた仕事を終えてしまえば自由に過ごすことができるし、いつ実家に帰っても文句は言われない。
その上、母の療養にかかる費用や、妹たちの生活費は、余るほど援助してもらえるのだ。
田所先生も相変わらず様子を見に来てくれているようで、母の体調もかなり落ち着き、最近では起き上がる日も多くなっている。
「死神の旦那様には、申し訳ないくらいね」
志乃はくすりと肩を揺らすと、ロウソクの火を消して、炊事場へと向かった。
「志乃様、今日はご実家にお戻りになりますでしょう?」
炊事場では五木が大きな釜で白米を焚いている。
「そのつもりですが、何かありますか?」
五木はモクモクと湯気のあがる釜に手を入れると、「よいしょ」と声を出しながら、しゃもじでご飯をかき混ぜだした。