大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「聞けば、志乃の母親は回復の見込みがあるという。今までの、死んでいった者たちとは違う。母親が回復したあかつきには、俺は志乃を実家に戻すつもりだ」
「実家に戻す!? なぜ、そのようなことを?」
驚いたのか、五木の声が少々大きくなる。
花奏は振り返ると、五木の顔を正面から見据えた。
「今回の話は、元はといえば田所に言われて受けたようなもの。本来の俺の意向とは異なる」
「それはそうかも知れませぬが……」
「志乃はまだ若い。死神の家に嫁いだと噂になれば、志乃の将来に傷がつく。このまま死神と会わずに、自由になるのが志乃のためだ」
すると再び口を閉ざした花奏の隣に、五木がそっと歩み寄った。
こうして並んでみると、五木もだいぶ歳をとった。
背中は曲がり、いつの間にか髪の毛も真っ白になっている。
五木は元々、花奏の父に仕えていたが、花奏が生まれてからは世話係として常に側にいる存在だった。
本来であればそろそろ隠居して、余生を静かに過ごしたい頃であろう。
それでも死神と呼ばれる花奏のため、今もこうして文句も言わずに仕えてくれている。
「実家に戻す!? なぜ、そのようなことを?」
驚いたのか、五木の声が少々大きくなる。
花奏は振り返ると、五木の顔を正面から見据えた。
「今回の話は、元はといえば田所に言われて受けたようなもの。本来の俺の意向とは異なる」
「それはそうかも知れませぬが……」
「志乃はまだ若い。死神の家に嫁いだと噂になれば、志乃の将来に傷がつく。このまま死神と会わずに、自由になるのが志乃のためだ」
すると再び口を閉ざした花奏の隣に、五木がそっと歩み寄った。
こうして並んでみると、五木もだいぶ歳をとった。
背中は曲がり、いつの間にか髪の毛も真っ白になっている。
五木は元々、花奏の父に仕えていたが、花奏が生まれてからは世話係として常に側にいる存在だった。
本来であればそろそろ隠居して、余生を静かに過ごしたい頃であろう。
それでも死神と呼ばれる花奏のため、今もこうして文句も言わずに仕えてくれている。