大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
「ただいま戻りました」

 志乃が玄関から顔を覗かせると、家の中はしーんと静まり返っている。

 五木はどこかに出かけているのだろうか。

 志乃は荷物を一旦脇に置くと、外に出て辺りをぐるりと見渡した。


 すると裏の畑の方から、何やら鍬を振る音が聞こえて来る。

 裏手に回り顔を覗かせると、五木が畑で作業をしているところだった。

「おや、志乃様お帰りなさいませ。お早うございましたな」

 五木は大粒の汗をかきながら、土を掘り返して雑草を抜いていた。

「私も手伝います」

 志乃はすぐに(たすき)をかけると、着物の裾を上げて畑に入っていく。

 「志乃様、汚れますからおやめなさい」

 慌てて制止する五木に構わず、志乃は腰をかがめると、四方八方自由に生える雑草を引っこ抜く。


 二人で黙々と作業をし、麻袋がいっぱいになった所で手を止めた。

「志乃様、お茶にしましょう。縁側にお持ちしますので、かけてお待ちください」
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