大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
 やはり死神は昨晩こちらに戻っていたのか。

「そ、それで、あの……その……」

 死神は自分が書いた手紙を読んだのだろうか。

 志乃はそれが気になって、再びもじもじと声を出す。

 すると五木がフォッフォッと笑い声をあげながら、大きくうなずいた。


「旦那様は、志乃様のお手紙を、ちゃんと読んでおいででしたよ」

「本当ですか!」

 志乃は途端にぱっと笑顔を咲かせる。

「そ、それで、旦那様は何と……?」

 様子を伺うような志乃に、五木は「うーむ」と考える振りをしてから「あ、そうそう」と手を叩いた。


「死神の旦那様という宛名に、少々驚いておいででした」

「え……そうなのですね。私、旦那様のお名前を存じ上げないもので……。やはり、失礼だったでしょうか……?」

 今にも泣きそうになった志乃に、五木は大きく(かぶり)をふる。

「そんなことはございませんよ。大切にしまわれておりましたから、きっと心の中ではほほ笑まれていたことでしょう」
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