大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
演奏曲は聴き馴染みのある、軍艦行進曲などが中心であったが、中には外国の曲も演奏された。
初めて聴くのに、どこか懐かしさを感じる曲が演奏され、志乃はその曲の事が知りたくて、後ろの五木を振り返った。
「五木さん、今演奏されているのは、何という曲なのですか?」
「私も曲名は存じ上げないのですが、確か外国の民謡、わらべ歌のようなものだったかと思います」
五木の声に、志乃は納得したように大きくうなずいた。
「だから懐かしく感じたのですね」
「懐かしい?」
「はい。私にはそう聴こえました。きっと故郷を思う心は、私たちも外国の方たちも、同じなのだと……」
志乃の言葉に、五木は始め驚いたような顔をしていたが、感心したようにほほ笑んだ。
演奏もいよいよフィナーレを迎える頃、ふと来賓席に目を向けた志乃ははっとする。
椅子に腰かけていた紳士が、こちらを見ているような気がしたのだ。
――まさか、あの方が旦那様……?
そう思った途端、志乃は見物客の間を縫って、来賓席の方へと歩き出していた。
初めて聴くのに、どこか懐かしさを感じる曲が演奏され、志乃はその曲の事が知りたくて、後ろの五木を振り返った。
「五木さん、今演奏されているのは、何という曲なのですか?」
「私も曲名は存じ上げないのですが、確か外国の民謡、わらべ歌のようなものだったかと思います」
五木の声に、志乃は納得したように大きくうなずいた。
「だから懐かしく感じたのですね」
「懐かしい?」
「はい。私にはそう聴こえました。きっと故郷を思う心は、私たちも外国の方たちも、同じなのだと……」
志乃の言葉に、五木は始め驚いたような顔をしていたが、感心したようにほほ笑んだ。
演奏もいよいよフィナーレを迎える頃、ふと来賓席に目を向けた志乃ははっとする。
椅子に腰かけていた紳士が、こちらを見ているような気がしたのだ。
――まさか、あの方が旦那様……?
そう思った途端、志乃は見物客の間を縫って、来賓席の方へと歩き出していた。