大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
まだ幼さの残る爽やかな笑顔を見せる将校は、志乃とさほど歳が変わらなそうに見えるが、夏衣の白い軍服の肩についた肩章は、階級を表す星が一つ光っていた。
「あの……助けていただき、ありがとうございました」
志乃がもう一度深々とお辞儀をすると、将校は嬉しそうにほほ笑む。
「実はお綺麗な方がいるなと、気になって見ていたんです。そうしたら、僕の目の前で転びそうになるでしょう? これはしめたと思って……」
そこまで言って将校ははっと頬を赤らめると、「いや、失敬」と言いながら頭をかいた。
志乃は初めキョトンとしていたが、その様子がおかしくて、ついくすくすと笑ってしまう。
「誰かお探しだったのですか?」
しばらくして将校が小さく首を傾げた。
「えっと、それは……」
志乃はそこまで言って初めて、耳に響いていた音楽が鳴っていないことに気がつく。
はっと辺りを見まわすと、演奏を終えた軍楽隊の隊員はすでに舞台におらず、その場にいた見物客たちも思い思いに帰路についていた。
「あの……助けていただき、ありがとうございました」
志乃がもう一度深々とお辞儀をすると、将校は嬉しそうにほほ笑む。
「実はお綺麗な方がいるなと、気になって見ていたんです。そうしたら、僕の目の前で転びそうになるでしょう? これはしめたと思って……」
そこまで言って将校ははっと頬を赤らめると、「いや、失敬」と言いながら頭をかいた。
志乃は初めキョトンとしていたが、その様子がおかしくて、ついくすくすと笑ってしまう。
「誰かお探しだったのですか?」
しばらくして将校が小さく首を傾げた。
「えっと、それは……」
志乃はそこまで言って初めて、耳に響いていた音楽が鳴っていないことに気がつく。
はっと辺りを見まわすと、演奏を終えた軍楽隊の隊員はすでに舞台におらず、その場にいた見物客たちも思い思いに帰路についていた。