大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
――え……?
驚いて顔を上げた志乃は、目を見開くと、そのまま時が止まったように動けなくなる。
志乃の肩を優しく抱いているのは、あの日お稽古の帰りに出会った、麗しくも美しい男性だった。
「谷崎少尉殿、私の連れのものがご迷惑をお掛けいたしまして、申し訳ございません」
男性はそう言いながら小さく頭を下げると、そのまま谷崎と呼んだ将校の顔を正面から見据える。
谷崎は表情を硬くすると、背すじをまっすぐに伸ばした。
背の高い二人が静かに見つめ合う姿に、志乃はもう頭が混乱してきてしまう。
――なぜ私は今、この美しい方に、身を支えられているの……?
パクパクと泡でも吹き出しそうになった志乃の前で、谷崎が声を出した。
「これは、斎宮司殿のお連れ様でしたか。そうとは知らずに、大変失礼いたしました」
谷崎はそう言うと、今にも目を回しそうになっている志乃の顔を、チラッと伺う。
「では私はこれで……」
谷崎はそっと目を細めると、そのままくるりと背を向け、多くの人が行き交う通りへと消えていった。
驚いて顔を上げた志乃は、目を見開くと、そのまま時が止まったように動けなくなる。
志乃の肩を優しく抱いているのは、あの日お稽古の帰りに出会った、麗しくも美しい男性だった。
「谷崎少尉殿、私の連れのものがご迷惑をお掛けいたしまして、申し訳ございません」
男性はそう言いながら小さく頭を下げると、そのまま谷崎と呼んだ将校の顔を正面から見据える。
谷崎は表情を硬くすると、背すじをまっすぐに伸ばした。
背の高い二人が静かに見つめ合う姿に、志乃はもう頭が混乱してきてしまう。
――なぜ私は今、この美しい方に、身を支えられているの……?
パクパクと泡でも吹き出しそうになった志乃の前で、谷崎が声を出した。
「これは、斎宮司殿のお連れ様でしたか。そうとは知らずに、大変失礼いたしました」
谷崎はそう言うと、今にも目を回しそうになっている志乃の顔を、チラッと伺う。
「では私はこれで……」
谷崎はそっと目を細めると、そのままくるりと背を向け、多くの人が行き交う通りへと消えていった。