大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~

母の回復

「志乃ちゃん、お母さんはもう大丈夫、安心して良いよ。よく頑張ったね」

 田所先生の声に、志乃は涙ぐむと、隣に寄り添って座っていた華と藤をぎゅっと抱きしめる。

 華と藤は「わぁっ」と喜びの声を上げると、志乃に抱きついて泣き出した。


 今日は田所先生から話があると言われ、実家に帰って来ていたが、まさかこのような嬉しい報告だとは思わなかった。

 志乃は母の側に寄ると、涙ぐむ母の手をぎゅっと握りしめる。

「志乃、あなたには本当に苦労をかけましたね。ありがとう」

 母はそう言うと、ゆっくりと身体を起こし、赤みがさして血色の良くなった顔をほほ笑ませた。


「おかぁさぁん」

 華と藤が母に抱きつき、三人は声をあげて泣きながら喜びを分かち合う。

 志乃もその様子を見ながら、あふれる涙を袖で拭った。


 母の病を知ってから、一時は絶望におそわれたこともあったが、今日この日を迎えられたことに、志乃も心からホッとしていた。

「本当に、田所先生にはお世話になりました」

 志乃はお茶の入った湯飲みを差し出すと、田所に深々と頭を下げる。
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