大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
 そんな志乃の様子に、田所はあははと声を上げると「ごめんごめん」と大きく手を振る。

「少し意地悪だったね。でも、安心したよ」

「安心?」

「うん。志乃ちゃんが、彼を嫌っていないってわかって」

「どういうことですか? 田所先生は、旦那様のことをご存じなのですか?」

 田所は志乃が嫁いだことは知っているが、嫁ぎ先までは知らないと思っていた。


 ――でも、違うの?


 志乃は訳がわからず、小さく首を傾げる。


「彼はね、斎宮司花奏は、僕の幼馴染なんだ」

「え……? 幼馴染……?」

 思いもよらない話に、志乃は驚いて目を丸くした。

 今まで、志乃の縁談話がどこから来たのか皆目見当もつかないでいたが、もしかしたら田所が関わっていたのだろうか?

 驚く志乃にほほ笑むと、田所はそのまま話を続ける。


「今まで彼には、何人もの妻がいたことは知っているかい? その皆が亡くなったことも」

「はい……それとなくは。たくさん並ぶ、仏壇の位牌を見ましたから」

 うつむく志乃に、田所は静かにうなずいた。
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