大正ゆりいろ浪漫~拝啓 死神の旦那様~
死神の真実
志乃は、はぁはぁと息を切らしながら、木の戸をぐっと押し開けた。
もう辺りは薄暗くなり、動き出した秋の虫たちが、あちらこちらで涼しげな音色を奏でている。
志乃は慎重に砂利道を進みながら、そっと屋敷の奥の方へ顔を覗かせた。
花奏の部屋には、ほんのりと明かりが灯っているのが見える。
――旦那様は、お屋敷におられるのだわ。
志乃は再び足を進めると、胸元にあてた手をぎゅっと握り締めてから、玄関の引き戸を力強く開いた。
「おや、志乃様。今日はご実家に泊まられるご予定では?」
土間にいた五木が、突然開いた戸に驚いたのか、目を丸くしている。
「そのつもりだったのですが……」
志乃はそう答えながら、そっと奥の様子を伺った。
屋敷の中はいつも通り静まり返っていて、奥から花奏が出てくる様子はない。
「お母上のお加減はいかがでしたかな?」
五木が急須を持ち上げると、熱い茶を湯飲みに注ぎながら穏やかな声を出す。
志乃は手荷物を台に置くと、姿勢を正した。
もう辺りは薄暗くなり、動き出した秋の虫たちが、あちらこちらで涼しげな音色を奏でている。
志乃は慎重に砂利道を進みながら、そっと屋敷の奥の方へ顔を覗かせた。
花奏の部屋には、ほんのりと明かりが灯っているのが見える。
――旦那様は、お屋敷におられるのだわ。
志乃は再び足を進めると、胸元にあてた手をぎゅっと握り締めてから、玄関の引き戸を力強く開いた。
「おや、志乃様。今日はご実家に泊まられるご予定では?」
土間にいた五木が、突然開いた戸に驚いたのか、目を丸くしている。
「そのつもりだったのですが……」
志乃はそう答えながら、そっと奥の様子を伺った。
屋敷の中はいつも通り静まり返っていて、奥から花奏が出てくる様子はない。
「お母上のお加減はいかがでしたかな?」
五木が急須を持ち上げると、熱い茶を湯飲みに注ぎながら穏やかな声を出す。
志乃は手荷物を台に置くと、姿勢を正した。