一緒に夢を追いかけて

社長になるの

一緒に夢を追いかけて

社長になるの

美久は、上品さの雰囲気をかもしだしたブルーカラーのスタイリッシュコートに優しげな雰囲気のブラウンのパンツ。大人っぽくなった感じ。龍太郎の思考に美久と腕を組んだ。姿が蜃気楼の様に流れた。その場所の設定を間違った。ジョイフルのランチにエスコートしたのを後悔する。さらに困った。ハンバーグ定食じゃ、このお膳立てが台無しだ。思考は次の行動を模索するが。昼間だ。カラオケなどと言ってはさらに。ドツボにハマる。美久にお酒はと尋ねると、えーと心地よい返事が返ってきた。すぐさま、生ビールを注文する。美久の目ん玉を見ると。驚いてる感じがする。しまったと感じるがもう遅い。生ビールがやってきた。お互いの手がいきなりジョッキを握り。一気に飲み干した。美久の頬が赤色に変色している。しばらくぶりに飲んだビールだ。少し酔いが回る。龍太郎「美久ちゃん。散歩しようか」ここは、酔いを覚ます必要がある。タクシーを呼び、車で10分の海浜公園へ走る。海浜という名前だが。山の麓に位置する。美久は窓の外を見ている。この設定はドツボだ。前日にデートのシュミレーションをしておくべきだった。美久「あの時のメッセージの場所ね」この言葉で、緊張が吹っ飛ぶ。美久は。このメッセージを私が呟いてから、LINEから、既読の文字が消えて、二年と言う月日が流れたのであった。タクシーを降りると、友達の言葉が頭をよぎる。50を過ぎたら、デートとか恋愛を楽しむ事は考えない。やばい、美久もそんな感じを頭に浮かべているのだろうか。身体の先の手のひらがもじもじと脈を打ってくる。その時。美久が手を握ってきた。龍太郎の身体に電流が走る。友達の忠告と違う。奴の見解は間違っている。いやまて、私の思考が誤作動してるのか。額から汗が落ち始める。その指の中はまるで、強力な磁石の様だ、なかなか、離れない。次の言葉が浮かんでこない。私「ここが昔。約束した場所だね」美久がうなづいた。びっくりした。この場所で美久と散歩するのはいつも夢の中に現れるシーン。美久も知っていたのだろうか。
夢の中には、ベンチに座っている高校生のカップルが抱き合っている。さらにさらに額から汗が流れ落ちてくる。その時。美久がハンカチを差し出して。笑みをこぼした。あの時の夢を美久は知っているのか。汗を拭った。次の言葉が出てこない。肩を叩こうとした瞬間に話し声が聞こえてきた。気がついたら美久を引き寄せて、美久の顔が近づく、もう、外部の声は遮断された。太陽の光が、ふたりの重なる額に強烈な光をぶつけた。そして、一瞬だった。美久の口元を奪う。さらにさらに汗がしたたり落ちる。
龍太郎は昨日の余韻が残っている。身体は熱があるようにぽかぽかとしている。美久とすれ違うが挨拶をしただけで。そそくさと事務所の中に消えた。あれやこれやと想いが湧いてくる。美久は会社の同僚だ。それに長く。LINE交換していても。大半は一方通行のメッセージ。美久の事は何も知らない。龍太郎は現場で事務所に行く用事はあまりない。
二年前を思い出す。美久は22歳で入社してきた。新入社員だ。龍太郎47歳。初日の事だった。「LINE交換しませんか」龍太郎は昔。出会いサイトにハマってしまい。会話を楽しむだけで。直接会う行動には至らずに。ブームは終わった。
ひとりで品質事務所で仕事をしていると、扉が開き、美久がやって来た。すかさず声をかけると、鼻をつまんで、一言。「会社では秘密です」そこへ同僚の沙織が入ってくる。沙織は龍太郎が美久に気があるのは知っている。まさか、LINEを交換しているとは思いもよらぬ。沙織は、今度の飲み会。相席してくれますと尋ねる。すると。そばにいた美久のハイヒールのカカトが。龍太郎の靴紐をぶっちぎった。公園での出来事以来、いつもの美久と違う。それまでは、何食わぬ顔での職場内。オフィスラブの展開だった。しかし。靴紐をぶっちぎってから。美久はふたたび、LINEで、音信不通になってしまう。3日が経ち。一週間が経ち、そして。1ヶ月。美久とは顔を合わせる。挨拶もする。会話もする。なのに、LINEについては、ノーコメント。龍太郎もやっと。異常な関係だと思い始める。朝礼で会社の経営が傾きかけてると課長の言葉が頭をよぎる。若い連中は山梨県にある本社へ出向する人材選びが始まる。従業員はうすうす感じていた。最近の仕事の大半は敷地内の草むしりがあったり、女性人の作った。ぜんざい会があったり。美久さんが、見合いをしたと、なんでも。結納を交わした。そんなはずはない。秘密の交際をしている。龍太郎は噂の出所が気になる。そんな中で、自ら。転勤を希望する。 龍太郎は既読のつかない、LINEを毎日、日課のように呟く。そして、届かないLINEで、誘いをかける。「お昼の15時に。鶴屋デパートの近くの辛島公園で待っています」公園には1時間前に着いた。人影はまばらだ。5分おきに鼓動に激しく揺さぶられる。15時を過ぎ。日がくれてきた。美久は、デパートの駐車場から見ていた。その場所へはやってきたが。龍太郎は気が付かない。龍太郎は待ち望んでいるのに。来るという信念がなかった。LINEで電話をかけるなんて。思い浮かぶことはなく。公園を後にする。近くにいて遠い。毎日顔を合わせる。なのに、まともな会話をしないんだ。何を、LINEで呟いている。龍太郎には痛恨の秘密があった。この会社に入社する前に、不思議な声を聞いた。その時は何が起きたのかと自分自身を疑った。その後、ふとしたきっかけで。聞こえないものが聴こえる。幻聴と言う。病気だと悟る。精神科に出向くと、精神薬を服用された。この精神薬を服用した事を悔やんだ。もう。子供を、産めない身体なのか。もしも。結婚して子供が出来たらと思うと、罪悪感に悩まされ続けている。美久に何と説明すればいいんだ。声が聞こえるとは、普通の人間にはありえない事である。龍太郎は美久に直接。コミュニケーションするのが、本当は怖い。無意識で逃げている感情が一方通行のLINEの意味だ。このまま、山梨に転勤していいのか、後悔はしないのか。出発の日がやって来た。空港に沙織の姿があるが、美久の姿は見えない。沙織は龍太郎に一通の封筒を渡した。そして。一言。「飛行機が飛んでから読んでね」その姿を見ていた課長が。バンザイを三唱した。龍太郎の脳裏には美久の顔が浮かぶ。今日は、昼から重要な会議が予定されていて、旅立つまでは残り5時間ある。同僚達が帰ってから、龍太郎は沙織から頂いた封筒をあけた。そこには。メッセージが添えてある。「未来の社長さん」その言葉を聞いた瞬間に、龍太郎の身体が熱くなった。急いで、スマホのLINEを開き。美久に。届くかわからない。メッセージを送る。「美久さん。一緒に山梨へ着いて来てくれ」咄嗟の思いつきだ。送信すると。いてもたってもいられない。あと5時間しかない。30分して、突然。スマホのバイブレータがなる。着信は美久からだ。「一緒に行ってもいいけど。社長になるの」龍太郎は、勢いに乗り返事を送る。「社長になる」出発。30分前に。龍太郎の視界に入って来たのは。走ってくる。美久の姿だった。
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