一緒に夢を追いかけて

交差する関係

交差する関係

美久は龍太郎との関係に答えが出ないまま、山梨での日々を過ごしていた。一方、会社では別の人間関係が徐々に彼女の心を揺るがし始める。ある日、社内での打ち合わせが終わった後、美久は新しく営業部に配属された同僚の真島健一と話す機会があった。彼は30代半ばの落ち着いた雰囲気を持つ男性で、入社当初から美久に親切に接してくれていた。
「美久さん、週末って何してるの?もしよかったら、一緒にランチでもどうかな?」と真島が軽く尋ねた。
美久は一瞬驚いたが、心のどこかで龍太郎との停滞した関係に不安を抱いていたこともあり、真島の誘いを断る理由が見つからなかった。
「いいですね。特に予定もないし、ぜひ!」と微笑んで答えた。その週末、美久は真島と一緒に山梨の名所を巡りながら、彼と様々な話をした。仕事のこと、趣味のこと、そしてこれまでの人生。真島の穏やかな口調と気さくな性格に、美久は次第に心を開いていく自分に気づいていた。ランチの後、二人は山梨の静かな湖畔を散歩しながら、穏やかな時間を過ごした。しかし、そんな穏やかな関係の背後には、複雑な感情が交錯していた。美久の心には、龍太郎への気持ちがまだ残っている。彼を追って山梨に来たのに、龍太郎はまるで彼女を避けているかのような態度を取っている。それでも、龍太郎が自分を誘った時の言葉や、その後の短いやり取りが、完全に忘れられないのだ。
「どうして、彼は何も言ってこないんだろう…」美久は真島との会話の最中でも、ふと龍太郎のことを思い浮かべてしまう自分に気づく。一方で、真島も美久への興味を隠すことなく、彼女に好意を持っているのが明らかだった。彼の穏やかさと優しさは、美久にとって心地よく、同時に心を揺さぶるものでもあった。こうして、美久の中で龍太郎との関係、そして真島との新しい出会いが交差し始める。どちらに進むべきなのか、彼女は自分でも分からないまま、ふたりの男性との微妙な関係の中で揺れ動いていた。その夜、アパートに戻った美久は再びLINEを開いた。龍太郎との既読のつかないメッセージを見つめ、送信する勇気が湧かないまま、画面を閉じた。真島との時間が楽しかったことを思い出しながらも、彼女の心はますます複雑になっていった。
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