一緒に夢を追いかけて

苦悩

苦悩

龍太郎は幻聴という症状が起きたことを悔やんでいた。もしかするとこの病は遺伝するのかもしれない。我に返った時、美久との進展を後悔した。

龍太郎はアパートの狭い部屋で一人、暗い天井を見つめながら過去の記憶と苦悩に苛まれていた。幻聴が初めて現れた日のことを、鮮明に思い出す。あの日から、彼は普通の生活を送れなくなった。最初はただの疲労だと思っていたが、徐々に幻聴が彼の生活を侵食し、やがて精神科を訪れることになった。そこで告げられたのは、想像もしていなかった診断だった。

「もしこの病が遺伝するものだったら……」そう考えるたび、龍太郎の胸に罪悪感が押し寄せてくる。自分がこのまま誰かと家族を持ち、子供が生まれたとき、その子が同じ苦しみを味わうかもしれないという恐怖は、彼を常に締め付けていた。そして、美久のことが頭に浮かんだ。自分の気持ちを伝え、彼女を山梨に呼び寄せたものの、その後の行動に何の進展もなく、美久は今も一人で週末を過ごしているだろう。彼女を巻き込んでしまったことへの後悔が、さらに重くのしかかる。自分は彼女に何も言えない。もし彼女に自分の病気のことを話したら、彼女はどう思うだろうか。美久の明るい未来に、龍太郎が暗い影を落とすのではないかという不安が、彼を押しつぶしていた。
「美久に対して進展を期待するなんて、俺には無理だ」と、龍太郎は自分に言い聞かせた。彼女が望む未来を自分が与えられるわけがない。美久は若くて、明るくて、素晴らしい未来があるはずだ。それを自分の病気や過去の苦しみで台無しにすることなど、許されることではない。そんな苦悩に苛まれながらも、龍太郎は美久との関係を断ち切る勇気もなかった。彼女が自分をどう見ているのか、どう思っているのか、本当のところは分からない。だが一方的に彼女を遠ざけるのもまた、彼の心を重くした。
「俺は一体、どうすればいいんだ……」
そうつぶやいた時、携帯が鳴った。画面には、美久からのLINEメッセージが表示されている。彼女は何かを感じ取ったのだろうか。それとも、ただの偶然だろうか。龍太郎は一瞬、メッセージを開こうとしたが、指が止まった。開けることができない。返信する勇気が湧かない。結局、彼はそのまま携帯をテーブルに置き、再び天井を見上げた。美久との関係が交差し、そして、自分の内なる苦悩が交差するその瞬間、龍太郎の心はますます深い闇の中に沈んでいった。
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