その恋は消費期限付き
夜8時。
ちょうどご飯を作り終えたタイミングでインターホンが鳴った。
ドアを開けると一人の女の子が立っていた。
ピンクのリボンでまとめられた、緩くウェーブのかかった真っ黒な髪の毛。
色白でちょっと力を加えたら折れてしまいそうな手足。
長いまつ毛が伏し目がちな瞳をより魅力的にみせている。
人形のような肌の上で艶のある唇が弧を描く。
一言で言えばモデルか芸能人のような女の子だった。
「はじめまして。隣に越してきた里瀬美奈です。」
鈴の鳴るような声で彼女は名を名乗る。
「俺は早乙女 隼人。花山高校の1年生です。よろしく」
「じゃあ同い年だ! 私のことは美奈って呼んで。よろしくね」
同い年と知り、ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ姿は人懐っこくて愛嬌がある。
夏の夜風が運ぶ、美奈の甘い香りが鼻をくすぐった。
「夜遅くにごめんね。さっき着いたばかりで。あんまり長居しても悪いしそろそろ帰るね」
身を翻し、美奈の家の方へと足が向く。
「待って! 家寄って行かない?」
無意識だった。
このまま美奈を帰したくなくて、もっと傍にいたくて、気づいたら帰ろうとする彼女の腕を掴んでいた。
「え……?」
美奈の顔に困惑が浮かぶ。
当然だ。
会って間もない人から突然家に寄らないかと聞かれたんだから。
「あ、えっと……」
慌てて言い訳を探そうと反らした視線の先に食卓に並べたお皿が映る。
「夜ご飯! そう、ご飯食べていかない?」
「まだご飯食べてないけど、お邪魔しちゃ悪いでしょ?」
「大丈夫! むしろ来てほしい。ちょうど作りすぎて困ってたから」
「そうなの? じゃあお言葉に甘えてもいいかな?」
「ぜひ」