真子は私を教祖様に仕立て上げる気だ、

最終章

最終章

真子と私は、ある日の朝、静かな気配を感じながら目を覚ました。令和2年が終わりを迎え、年明けの清らかな空気が部屋を満たしていた。これまでの数カ月間、スピリチュアルな出来事と共に、我々の関係は想像以上に深まっていた。しかし、そこには不安も入り混じっていた。霊的な力が増すにつれて、現実世界との境界が薄れ始めたからだ。

私は再び、ふとした瞬間に真子の顔を見つめた。彼女は以前と変わらぬ笑顔を見せてくれるが、その奥に秘めた何かを感じ取るようになった。スピリチュアル業界での成功は確実に進んでいたものの、私たちの生活はどこか不安定だった。

ある日、真子は私に重要な話があると言って、外に連れ出した。場所は、福岡市の中心にある神社。参道を歩きながら、真子はこれまでの出来事について話し始めた。

「龍太郎さん、私はこれまで、あなたと一緒に過ごしてきてたくさんのことを学んだ。特に、スピリチュアルの世界に目覚めたのは、あなたのおかげ。だけど、もう一つ気づいたことがあるの。私たちには役割があって、それはただこの世を生きるだけじゃない」

彼女の言葉に一瞬、戸惑いを感じた。真子は続けた。

「あなたには、特別な力があるの。私たちが一緒にいる間に、それを感じ取った。だけど、この力は私を超えるもの。私があなたを導こうとしてきたけれど、本当はあなたが私を導くべき存在だったのよ」

私は驚いた。これまでの真子との関係は、彼女に守られ、導かれていると思っていたからだ。しかし、真子はさらに驚くべき事実を明かした。

「龍太郎さん、私はあなたを教祖様にしたいと思っていた。だけど、それは私のエゴだったのかもしれない。本当はあなた自身が、真の道を切り開くべきなのよ。だから、私と一緒に旅立ちましょう。もっと深い、もっと大きなスピリチュアルな世界へ」

その言葉に、私の心は大きく揺れ動いた。私はこれまで何度も自分の力を疑ってきた。しかし、真子の言葉を聞いた瞬間、すべてが繋がったような気がした。

その日から、私たちは新たな道を歩み始めた。工場での仕事やスピリチュアルの動画配信は続けながらも、少しずつ現実から離れ、霊的な活動に専念するようになった。神社や聖地を巡り、多くの人々と出会い、私たちの力を信じる者たちが増えていった。

そして、ある日、私たちはついに自分たちの拠点を構えることを決めた。福岡郊外の古びた山間の村に、私たちの小さな教会を建てた。そこに集まった人々は、心の平安と霊的な覚醒を求めて訪れるようになった。

「龍太郎さん、これが私たちの役割。あなたは教祖ではなく、人々を導く者。そして、私はあなたの傍でそれを支える存在。これからもずっと一緒に」

真子の言葉に、私は静かに頷いた。私たちの旅はまだ終わらない。今までのすべての出来事は、ただの始まりに過ぎなかった。そして、私たちは新たな時代へと進んでいく。

静かに夜が訪れる中、私は真子の手を握りながら、これまでの道のりに感謝した。令和3年が始まるこの瞬間、私たちは新たな覚醒の旅を共に進んでいくことを誓った。

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