父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし
🎏 父を弔う夜
日当たり悪しくじめじめと湿気った裏店(長屋)の片隅で、板間の上に敷かれた薄っぺらい煎餅布団に男が寝かされている。
その面は白い木綿の布っきれに覆われていた。
「……なんだな、まぁ……急なこって、おめぇさんたちもこれから大変だろうとは思うけどよ」
地主に代わってこの裏店を預かる 家守の茂三は、布団の脇で並んで座す死人の女房と倅に目を向けた。
女房は未だ三十に届かず、倅は十にも満たない。
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