父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし
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茂三はすぐさま洗い物をおいくに託して、丑丸に「お下がり」の着物を着させた。
その後、表通りにあるおのれの仕舞屋へ丑丸を連れ帰った。
女房のおよねに丑丸を巽の一番陽当たりの良い座敷に通させる。
およねは茶の支度をするからと、すぐに下がっていった。
同じ家の奥の座敷とは云え、先日のとは明らかに異なった。
茂三たちが寝間に使っている先般の間ではなく此処は客間だった。
張り替えたばかりの畳面なのだろう。
清々とした井草の匂いが芳しい。
されども、裏店育ちの丑丸にはどうにも落ち着かない。
お下がりが手に入ったのはありがたかったが、いかんせん古着である。
こないに綺麗な畳を汚しちまったらと思うと冷や汗が出た。