父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし
🎏 父さん 母さん 求めたし
丑丸は大きく目を見開いた。
「まだ八つのおめぇには、ちっとばかし難しい話になるが聞いとくれ」
茂三が其の目をじっと見て、噛んで云い含めるように告げる。
「此度な、六年ごとのお改めがあってさ。どいつがどこの町でどの家に住んでるかってぇのを、改めて御公儀に申し出なきゃいけなくなっちまったんだ。
そうすっとよ、今はあっしが用立ててあの裏店に住まわしてやってっけど、おめぇのような餓鬼がたった一人っきりであの家に住んでるっ云ってもさ、御公儀ってとこは頭が固くってよ、赦しちゃくんねえのよ」
丑丸はすーっと目を落とした。
そして、唇をぐっと噛み締める。
「だけどね、あんたがあたしらの子になってくれさえしたらさ、此の家の子として申し出ることができて此処に住めんだよ」
およねがさらにずいと膝を進めた。