父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし
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そのあと、丑丸はおのれの裏店に帰ろうとしたが叶わなかった。
立ちあがろうとしたらくらりと目が回って、そのままばたりと畳の上に崩れ落ちたのだ。
あわてておよねが駆け寄れば、お下がりの古着に包まれた丑丸の幼い身体が燃えるような熱を帯びていた。
いくら今日一日雨の降ることなく晴れ間が続いたとは云え、夏でもあらぬのに外で下帯一枚でいたなど正気の沙汰ではない。
すぐさま医者を呼びに、茂三が足をもつれさせそうになりながらも座敷を飛び出していった。
やってきた医者の見立てでは、父の命を奪った流行病の類ではなかろうとのことであった。
されども、その日から三日三晩、丑丸は高熱のため昼夜を問わず魘された。
三日後、丑丸が寝込んでいる間から出てきたおよねは深いため息を吐いた。
「熱の方はなんとか治ってきたけどさ。やっぱり気苦労が祟ったんだろねぇ、可哀想に……」
持っていったお粥はほとんど手がついていなかった。
「ところでお前さん、丑丸から尋ねられたんだけどさ。表の張り紙を見て、あの子を引き取ろうっ云う御武家さんは訪ねてきたかえ」