父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし
茂三は首を左右に振った。
「淡路屋の方にも何処に伝手はねえか、頼んでんだけどな。店の小僧(丁稚奉公)とかなら、いっくらでも話をつけられってぇのによ」
苦々しげに、手にした煙管から莨を一つ呑む。
「そんなの一昨日来やがれってんだ。店の小僧なんかにするくれぇなら、うちの子にするってんだよ。
……ねぇ、なんとか考え直させてさ、今からでもあたしらの子になってくれないかね」
およねは縋るような目で茂三を見る。
若い頃に亡くした我が子が丑丸の姿になって還ってきてくれたとしか思えなかった。
するとそのとき、表の引き戸ががらからがら…と開く音がして、
「ごめんくださいまし。淡路屋さんから伺って参った者でござりまする」
女の声が聞こえてきた。