父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし

すると、御新造が座布団を外して横にやり、打掛の裾をひらりと翻して畳の上にきちりと座り直した。

「後生一生のお願いにてござりまする」

すっと綺麗に三つ指をつくと、深々と(おもて)を下げる。

もちろん、御武家の妻女が一介の町家相手にすべき所作ではない。


「どうか、わたくしに——その子をお与えくださりませ」
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