父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし

青井が仕える広島新田藩は、安芸国の大藩・広島藩の支藩として今から十年ほど前に立藩が(ゆる)された。

支藩を治める藩主には、次男や三男があてられることが多い。

本藩に世継ぎが生まれない際には、支藩から供することを求められたゆえだ。

御公儀(江戸幕府)の公方様(将軍)も世継ぎに恵まれない折には、尾張・水戸・紀伊の「御三家」から次の公方様が選ばれる。

現に、八代の公方様(徳川吉宗)が紀伊国和歌山藩より千代田のお城(江戸城)に迎えられていた。


広島新田藩もまた、本藩である広島藩の前藩主の三男・浅野(あさの) 宮内少輔(くないしょうゆう) 長賢(ながかた)が初代藩主の座に就いた。

今でこそ初代藩主まで登りつめた浅野 宮内少輔だが、常に長兄や次兄などとの御家騒動の火種になる恐れがあった。

それゆえ、生まれてまもなく物心つくまで密かに乳兄弟二人とともに百姓家に預けられていたくらいだ。

その乳兄弟のうちの片方が青井だ。

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