父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし
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明くる朝、茂三の住まいである表通りに面した仕舞屋に男が飛び込んできた。
ちょうど水を撒きに表に出ようとしていた女房のおよねと出会い頭にぶつかりかける。
「ちょ…ちょいとあんた、不躾になんなのさ。一体全体、うちに何の用だってんだ」
およねは柄杓を振り上げて喚いた。
「なんだ、朝っぱらから騒々しい」
家の奥から茂三が懐手をして出てきた。
三和土にいる男——否、男の子の姿に細い目を見開く。
「丑丸じゃねぇか。こないな朝早くにどうした。おっ母さんは表にいるのか」
すかさずその目を外は遣るが、通りにおすみらしき女はいなかった。
「——今朝、目が覚めたら……いなくなっちまってた…… 昨夜もらった銭と一緒に……」