父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし
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およねに差し出された京の煎じ茶を飲みつつ、青井は告げた。
「継ぐほどの御家でもあるまい、と思ってござったが、子ができればそうも云うておれぬ。 某の嗣子とならば、やがては我が広島新田藩の次代を引き継ぐ若様の近習を仰せつかることになろう」
浅野 宮内少輔には嗣子・鍋二郎がいた。
のちの二代広島新田藩主・浅野 兵部少輔 長喬である。
歳は丑丸より十近く上であった。
「丑丸、若様の御為におのれの命を身代わりに差し出せるか」
其れは次代の「御前様の懐刀」になれるか、という問いだ。
その刹那、丑丸の目がかっと見開かれ、青白かった頬にさっと朱が走った。
「——御意」
丑丸は引き締まった面持ちで、しかと応じた。