副社長は輝きを秘めた彼女を暴きたい
「いや、無理」

『なんでよ』

なんでって。

「心配だし。俺が引っ越せって言ったから、責任を…」

『責任? なにそれ。私このまま連れて帰っていい?』

「ちょ、待てって!」

『何よ。責任てだけで一緒にいるの?』

いや…それは。
その時ようやく気づく。

「…違う」

『いつもの遊びなら那智はやめて。わかってるでしょ?』

「わかってる。だから…俺に任せてくれ」

『他の女は?』

聞かれると思った。

「切ったよ」

『ははは! まじじゃん!』

「うるせ」

『でも何かあったらすぐに連れ出すからね』

「なんもねぇよ」

『ふふふ。どうだか。とにかく大事にして』

「ああ」

そうして電話を切った。

カウンターにいる奏翔と目が合う。

「認める。俺、惚れてんだな」

「ああ。気づくの遅すぎ」

本当だよな。
カランとグラスを傾ける。

「お前が女のために何かするとかなかったろ今まで」

確かに。
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