副社長は輝きを秘めた彼女を暴きたい
「それは、うん。そうだったね」

「ああいう大人こそ社会から最後には取り残されるんだよ」

「う、うん」

「だから気にしなくていい。今も昔も。お前は何もしてないだろ?」

那智は瞳を大きくしたあと、涙を浮かべて必死にそれを堪えながらコクっと頷くと俺の服の裾をキュッと掴んだ。

「絃…帰ろ…」

「ああ。帰ろう。俺たちの家に」

俺がクソみてぇな思い出、上書きしてやる。

那智は帰りの新幹線で昔の話をしてくれた。
彼女達の言う通り中学時代、勝手に思いを寄せられた上に逆恨みされて嫌がらせをされていたらしい。

運動もできて、成績も良くて、見た目も良かったんだもんな。そりゃ目立つか。
那智は人の陰口も言わないし、素直だ。
オタクとか言ってるけど、そんなん全く気にならないし。

それでひがまれて孤立してしまったなら、地元を離れたくもなるか。
殻に閉じこもって、人を信用できなくなるのは当然だ。
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